景観デザイン

美しいものをデザインして大地に残し、後世に伝えること。人々が気持ちよく・楽しく使える空間を提供すること。自然や生物環境を守りながら、人が豊かに暮らせる社会基盤をつくっていくこと。それが、私たちが取り組む「景観デザイン」という仕事です。

これからの社会とは「暮らしやすく、自分らしさ(個性、多様性)を感得でき、地域の社会や環境に一人一人が貢献できる社会」へ移りつつあると考えています。その社会を実現するためには、地域に脈々と流れる文化や人々の暮らし方に向き合い、人と自然とが調和する最適解をきめ細やかに追求する必要があります。「安全で便利な社会」からさらに一歩その先へ。実現すべき価値を設定し、俯瞰的かつ分野横断的な観点で様々なモノやコトを統合的に考えまとめる、それが総合建設コンサルタントである当社の景観デザインという仕事です。

構造デザイン

美しい構造物は地域を象徴し、次の時代への活力となります。建設コンサルタント鋼構造およびコンクリート部門No.1の技術力をもって、力の流れに従う合理的な形でありながらも、地形と地域文化を読み解き、その場にふさわしいたたずまいを備えた美しい姿をデザインします。

美しい姿・佇まいを備えた東北復興のシンボルに ~気仙沼湾横断橋~

三陸沿岸道路の一部として架けられた東北地方最大の斜張橋です。東北復興のシンボルとなる橋であるため、その姿や佇まいを美しいものとすべく、主塔を中心にかたちをデザインし、夜景を彩るライトアップの提案も行いました。

主塔は1面吊りの構造系で、ケーブルや桁から作用する力をスムーズに基部まで流すことを意識し、塔頂の1本柱部から下へ二股に分かれて延びる部分は滑らかな曲線でつなぎました。主桁下の横梁部から柱基部までは太い柱とし、しっかりと橋を支える印象を与えました。柱の角には耐風安定性に優れた面取りとしていますが、これにより主塔全体が柔らかいイメージになっています。


隅田川の新たなゲート、合理的な構造が実現する開放感 ~築地大橋~

東京都市計画道路環状第2号線のアーチ橋です。海から隅田川を遡ると最初に架かる「第一橋梁」となるため、清洲橋、永代橋等の歴史ある隅田川橋梁群にも見劣りしない姿を求め、「建設後100年を経てもなお、東京都民の誇りとなる橋」を目標にデザインしました。

左右に約14度傾斜した上横支材のない双弦アーチと吊材の織りなすダイナミックかつ繊細な構造シルエット、アーチ曲線を平面に投影した緩やかに弧を描く歩道の存在が本橋の特徴です。アーチリブと車道を支える吊材、歩道を支える鉛直材とで三角形を形成しアーチリブの地震時面外座屈を抑制するという構造合理性を確保したことにより上横支材を省略でき、開放的な橋上空間を実現しています。


周辺景観との調和、日常の道具としての美しさ ~新豊橋~

両岸の住宅地同士をつなぐ、“日常的な道具としての美しさを備えた橋”がコンセプトです。隅田川橋梁群の1つにふさわしい橋とするべく、時代の先端技術を採り入れながらプロポーションからディテールに至るまで人のぬくもりを感じられるよう細やかなデザインを行いました。

周辺の高層住宅群とのボリュームバランスを考え、ライズが低くヒューマンスケールに近いアーチ形態を採用、「単純桁に作用する曲げモーメントが大きくなる中央部分をアーチで補剛する」という力学的考え方に基づいて基本構造を決定しています。アーチから端部の桁につながる線が美しく見えるよう、手描きの線をベースに滑らかかつ伸びやかな4次曲線を設定し、全体をつなぎました。

すべての利用者が潤いを感じられる空間づくり ~大泉学園駅前デッキ~

西武池袋線大泉学園駅と周辺施設を快適に繋ぎ、すべての人に優しい歩行者動線とすること、桁下に光を届かせ、緑豊かでほっとする潤いのある空間を提供することをコンセプトとしてデザインしたデッキです。周辺には武蔵野の面影を残すケヤキの群落が点在しており、この雰囲気を駅前にも取り込むこと、そしてその緑が視界にさりげなく入るように動線と木々の配置を調整しました。中央の開口部から見える大きなケヤキは、周辺の植栽およびベンチとともに公園のような雰囲気も出しています。大きな曲線を描く通路部は施設間の高低差を緩くつなぎ、車いすやベビーカー利用者にも優しいみちを作っています。


海に開き海風を受け流すデッキ ~はまみらいウォーク~

横浜駅東口地区とみなとみらい21地区とを結ぶ、地区のゲートウェイにふさわしい橋としてデザインを行いました。海風の影響や強い日差しの軽減が求められたが、一方で海へ開き、海を感じるイメージも大事にしたいと考え、「海へ」という方向性を断面形に表現した、非対称の流線型という基本フォルムを生み出しました。

シェルターの開き具合は、風況シミュレーションを踏まえ通行者に強風が吹き付けないことを確認するとともに、海への開放感を与えられるよう注意深く決定しました。特徴的な曲面形状を持つシェルターと桁は、「未来的なチューブ」に見えるようデザインしています。


両岸を軽やかに結ぶ、都市を眺める視点場 ~竜閑さくら橋~

首都高八重洲線と都心環状線が合流する神田橋JCTとJRの高架橋の間に位置し、日本橋川の両岸にある大手町地区と神田・日本橋地区を結ぶ人道橋です。

両岸を繊細かつ軽やかに結ぶため、箱桁下フランジに曲線を入れ、ウェブを傾けた六角形断面とし、桁が極力薄く見えるようにしています。さらに、横から見た姿が軽快なものとなるように地覆の厚さを軽減するために高欄を地覆外側までを伸ばし、桁下からの見え方をすっきりとさせるために主桁ブラケットの下フランジを省略させる、などの工夫を行っています。夜間は高欄笠木に内蔵した照明が帯状の光となり、歩く人を浮かび上がらせます。橋の上は、行き交う電車をのんびり眺める人の場所でもあります。


空間デザイン

街路・広場・公園・歩道など、人がゆったり歩ける場所、そして時にはみんなで集まってわいわいと楽しく過ごせる場所、そんな空間をデザインしています。主役は人、整備する空間はその活動を支える「舞台」。舗装や施設などの舞台装置は控えめに、しかし「こんなことがしたいな」を助けられる存在となるように。

平安の遺構を紡ぎ、時と人がゆるりと流れる日常へ ~中尊寺通り~

JR平泉駅から世界遺産「無量光院跡」を経て世界遺産「中尊寺」に至る道路のデザインです。約1.4kmの移動が退屈にならぬようゾーンを3つに分け、石畳を配した商店街地区で誘い、カーブを抜けると厳かな光景の拡がる無量光院跡を存分に魅せた後、次第に参道の雰囲気が色濃くなるという「奥性」を持つ配列としました。

沿道2か所にお休み処を整備し、参道らしさやお祭り等の「ハレの日」を演出する仕掛けを施しました。快適な歩行空間による賑わいと、風情あるまちなみに寄与するよう、自動車の速度抑制を念頭に,車道には石畳を、歩道部には歩行感に留意したアスファルト舗装を設置しています。



地域の人々でにぎわう場所 ~豊橋ストリートデザイン(水上ビル)~

豊橋ストリートデザイン事業」は、豊橋市の中心市街地の回遊性向上を目指し、通りの景観や歩行環境の向上を目的とした道路空間の再整備を行うものです。ワークショップにて地域の合意形成を図りながら、計画・設計を行ってきました。

隣接する「まちなか広場」と共に整備された「水上ビル(北側)」のメインの区間では、舗装や照明の更新だけでなく、地域の方が通りを利活用しやすくなるよう、水上ビル側の歩道を拡幅する道路空間の再配分も行っています。商店街のイベント時には、拡幅部分(アーケード庇の外側)にテーブルやイス、商品などが並べられ、地域の方が楽しみながら道路空間を使いこなしている様子が見られます。

施設デザイン

トンネル坑口や機械設備を格納する建築などの社会基盤施設もデザインします。コンクリート構造物として大きな存在感となりがちなものですが、周辺の環境や景観の中でできるだけ目立たないように、かつ風景の中でバランスが取れたものとなるように、形態・意匠・仕上げ等を検討します。

日本の玄関にふさわしいダイナミックな造形 ~空港北トンネル~

国道357号および首都高速道路湾岸線の空港北トンネルです。柳工業デザイン研究会が基本デザインを起こし、それを当社が引き継ぎ、詳細検討を含む実施設計を実施し完成させました。日本の玄関に相応しい「未来感覚」をイメージさせる大きな曲面で構成されたダイナミックな造形と、トンネルへの入りやすさといった運転者心理を想定した総合的なデザインを行いました。


ヒューマンスケールへの意識 ~中央環状品川線大井北換気所~

トンネル構造である首都高速中央環状品川線の換気所です。RC造/地上6階・地下4階、地上部はほぼ一辺約30mの立方体形状となっています。そのままでは無骨になってしまいがちな建屋の一部に、居室部など内部の空間構成を反映したシンプルなルーバーを設置し、ボリューム感の低減を図りました。

現場で壁面とルーバーのモックアップ(実物大模型)を作成し関係者で確認を行い、イメージから具体的な施工へと結びつけています。建物外構には高木植栽を施し、周辺環境に馴染んでいくことをねらっています。


自然環境保全デザイン

自然豊かな場所に道路などの社会基盤施設を作る際には、「いかにして地形改変を最小化し、緑を保全するか」を考えます。改変せざるを得ないところも、どのようにしたら自然に馴染むか、早期に緑が回復するか、生物生息環境が守られるか、を意識してデザインします。

自然と共生する道づくり ~志賀ルート~

志賀高原の豊かな自然環境は、豊富な水資源とそれを基盤とした原生自然にあります。水源への影響を回避し、出来る限り生態系に配慮した道路線形としました。また地山に沿った道路線形を基本として新たな土地の改変を極力避けることにより、沿道の森林植生の保全に努めました。

構造物のデザインでは、極力存在感の小さなトンネル坑口とし、道路横の擁壁は巨石積みとして、草木が生えてやがて自然に還るようにしつらえました。


模型による検討

デザイン検討には模型を使います。模型によりアイデアを立体化し、様々な角度から眺め、またそれを囲んで仲間や関係者と議論することで、イメージが洗練され、コンセプトを具現化する「ある1つのかたち」に向かって統合・収斂されて行きます。CGやVRなどの技術も日々進化しており、優れた将来予測ツールとして活用していますが、模型は3次元空間内に置かれるため全体像を把握しやすいこと、人の手が生む美しい線を表現しやすいことなどの特長があります。

全体デザインの検討 ~天城橋~

周辺地形や周辺景観とのバランスを見るために、地形模型の中に橋の模型を置いて様々な角度から確認します。天城橋の設計では、既設の天門橋と並列する新しい橋について、形態のバランス、現代技術の表現、自然環境の保全、施工面の課題などを模型により検討しました。


プロポーションの検討 ~気仙沼湾横断橋~

模型の特長は、ひと目で全体の形を把握できるところです。また、立体物であり陰影がどのようになるか分かりやすいこと、部分を削ったり付け足したりしたらどんなバランスになるかの試行錯誤が容易であること、といったメリットもあります。気仙沼湾横断橋では、主塔の美しいプロポーションを実現するため、いくつも模型を作成し、観察し、洗練させていきました。

写真左:当初の主塔案、写真右:最終案。当初案に対し、主塔上部には曲線を入れて滑らかかつスレンダーな形に。柱基部では幅を大きくし、安定感を出している。

お問い合わせ先

技術やサービスについてのご質問は、下記の総合お問い合わせ窓口で承っております。お気軽にご相談ください。