高品質ボーリング調査

断層破砕帯、地すべり土塊、割れ目密集部、硬軟混在部など、通常のボーリング工法ではコアの採取率が低下する地山などに対して、高品質なコアを高い採取率で採取します。

近年、原子力関連業務や地すべり関連業務、ダム関連業務のボーリング調査において、地盤状況や岩盤状況を精度よく把握するために「高品質ボーリング」が仕様として求められるケースが多く見られます。
「高品質ボーリング」は、断層破砕帯、地すべり土塊、割れ目密集部、硬軟混在部など、通常のボーリング工法では採取率が極めて低下する、または乱されたコアしか採取できない地山などに対して、軟質部や細粒分の流出を抑制し、地山の自然状態を保った乱れの少ない品質のコアを100%に近い採取率で採取するものです。手法としては、気泡や増粘泥水等の流体を用いてコアを採取する場合、特殊なツールス等を使用する場合、定方位等特殊用途の場合、また、一般的な普通工法において、いわゆる低送水量低給圧工法により高品質なコアを採取する場合等があります。
「高品質ボーリング」において、コア採取技術が重要な要素であることは言うまでもありませんが、それと同等に、採取したコアの後処理、「コア出し」、「運搬」、「洗浄」、「コア箱への入れ方」、「コア写真の撮影」、「保管」等の取扱いがコアの品質を左右し、地盤や岩盤の判定に影響を与えます。
当社では、社内において、「高品質ボーリング」の品質を確保する目的で、以下の制度の立ち上げやマニュアルの作成を行ってきました。

  • 高品質ボーリング技能認定制度の立ち上げ

    高品質なコアを採取できる技能を持ち、安全作業ができるボーリングオペレータの社内認定制度

  • 高品質ボーリング業務対応マニュアルの作成

    高品質ボーリングに関する技術提案の着目点や調査計画、掘削作業、コア出し、コア洗浄、コア写真の撮影、コア運搬、保管方法等について地質技術者が留意する点について整理した社内資料

高品質ボーリングコア採取に関する品質の確保(高品質ボーリング技能認定制度)

高品質ボーリングの現場の最近の傾向として、従来であればワイヤーライン工法を採用していた300~400m級のボーリングでも、コアの品質向上のため普通工法を採用している場合が増えています。
掘削においては、掘削孔径は大きくなる傾向にあり、φ86mm以上、コア径もφ65mm以上が望ましいとされています。ツールスにおいては、ビニールスリーブを収納できるダブルコアチューブ以上のコアチューブを使用することが最低限の条件となります。
当然のことではありますが、採取されるボーリングコア良し悪しは、掘削作業を行うボーリングオペレータの技術力や経験が大きく影響します。
当社では、一定レベル以上の高品質ボーリングコアを採取できるボーリングオペレータについて、高品質ボーリング技能者として登録する制度を設けています。
認定にあたっては、以下の条件を満足するものとしています。

  • ボーリング機長の実績があること
  • 高品質なコア採取やサンプリング技術等において、創意工夫や品質確保に優れた実績を有すること(別途定量的な指標に基づき判定)
  • 無事故期間が3年以上であること
  • 現場にて指導的立場で指示・指導、作業ができること

令和5年3月時点では、52名のオペレータを高品質ボーリング技能認定者として登録し、認定書を発行しています。

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左:技能認定申請書/中:添付するコア写真の例/右:技能認定書

高品質ボーリングコア取扱いに関する品質の確保(高品質ボーリング業務対応マニュアル)

高品質ボーリングの品質の確保においては、前述のコア採取技術と同等に、採取後のコア取扱いについても品質を大きく左右し、地盤や岩盤の判定に影響を与えます。
以下に、着目する項目について記載します。

ボーリング掘削の区切り

高品質ボーリングでは、ボーリングコアの見栄え(乱れのないコア、人為的な割れ目のないコア)が重要です。ボーリングコアのコア箱への収納を考慮して、メートルごとの区切り(例えば、1.00mや2.00mの区切り)でコアチューブを上げて、コア箱ではボーリングの区切りが分からないようにするとボーリングコアの見栄えが良くなります。

コア箱へのコア収納

ボーリングコアをコア箱へ収納する際は、末端部(上部)のスライムや崩落物を取り除き、ボーリングコア長を測り、削孔深度、ボーリングコアの上下方向を間違わないようにして、半割れ塩ビを下に敷き、所定の位置に収納します。ボーリングコアはビニールスリーブに入れたまま、衝撃を与えないよう注意します。コア箱の右端伸び代に隙間が生じる場合は、ボーリングコアが移動しないよう仕切り板等を詰めて固定します。
層理や片理の発達したコアは、最大傾斜方向をそろえると見栄えが良くなります。

コア取り出し状況
コア箱への収納状況

コアの洗浄

ボーリングコアの洗浄は、噴霧器で少量の水をかけながら、ハケや指で洗浄を行います。水をかけすぎて割れ目の挟在物や軟質部を不用意に流失しないよう注意します。未固結堆積物の場合は、コアと表面のマッドケーキを判別した上で洗浄を行うことが重要です。また、未固結の緩い砂層は、水をかけると溶け出す可能性があるので慎重に洗浄を行います。スリーブをはぎ取ったボーリングコアは速やかに洗浄を行います。

左:コアの洗浄作業状況(洗浄前)/右:コアの洗浄作業状況(洗浄後)

コア写真の撮影

コア写真の撮影は、色調、鉱物、粒子、組織、割れ目、風化程度、変質程度などの地質性状を的確に判読できる必要があり、拡大して使用することが考えられるので、可能な範囲で高解像度での記録が望ましいです。
撮影にあたっては、簡易な撮影架台と昼光用の写真撮影用アイランプ(レフランプ)またはLEDランプ等を用いると、安定した写真撮影が可能となります。

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現場事務所に設置する簡易撮影架台の例①
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現場事務所に設置する簡易撮影架台の例②

人為的な割れ目の表示

掘削作業の区切りやハンマー打診などによって人為的にボーリングコアを割った場合には、ピンや板等を用いてマーキングし、地盤や岩盤中の割れ目と区別できるようにします。最近では、残土処理計画を行う上で、重金属の有無を判定するために、帯磁率を測定するケースが多くなっています。そのため、目印をつける場合は金属製の素材は使わず、プラスチック製の素材を使用します。

プラスチック仕切り板の利用例
▲印でコア箱に直接記入した例

コア箱の運搬

ボーリングコアを収納したコア箱を運搬する際には、ボーリングコアを痛めることがないように細心の注意を払います。コア箱を運搬する際は、衝撃や振動等でボーリングコアが破損しないように保護材を用います。
コアの上側に半割れ塩ビを被せ、コア箱の内フタに発泡スチロールを入れて隙間をなくすなどの処置を取ります。

半割れ塩ビ管や発泡スチロールによる保護
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緩衝材を用いた運搬状況(車両・モノレール)

コア箱の保管

ボーリングコアの劣化等を防止するために、屋根があり雨水の凌げる場所に保管します。室内試験に供するボーリングコアについては、温度湿度管理を適切に行い、夏季においては乾燥、冬季においては凍結等に注意して管理する必要があります。
急速に劣化が生じる軟岩や未固結堆積物のコアの場合は、ビニール袋による封入や真空パックによる処置を行います。

ボーリングコアは、硬質、軟質、割れ目が多いもの、破砕帯のようにぜい弱なもの、未固結のもの等があり、厳密にはそれぞれの特性に応じて取扱い方法が異なります。
現在、当社では過去の高品質ボーリングコア採取事例を整理し、ボーリングコアの性状に応じたコアチューブからの取出し、コア箱への収納、運搬、洗浄、ボーリングコア写真の撮影、必要とされる期間の保存方法についてマニュアルを作成しています。
今後は、高品質ボーリングコア採取に際して、作業効率向上も加味した手順についても検討する予定です。

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