活断層調査

活断層調査では、活断層の位置や性状、過去の活動履歴や今後の地震発生確率を把握するために、地表踏査、物理探査、ボーリング調査、トレンチ調査などの調査を実施します。

活断層とは、過去に繰り返し活動し、将来も活動する可能性のある断層のことを指します。地震の発生に伴い地下で断層がずれ動き、そのずれが地表まで達した場合には、断層に沿って地面がずれて直上の構造物に甚大な被害をもたらします。また、活断層の近傍では地震の揺れが大きくなることが知られています。これらの活断層に起因するリスクを軽減するためには、活断層の位置、ずれの特徴、発生する地震の規模、過去の活動履歴や今後の地震発生確率を把握する必要があります。これらを明らかにすることを目的として、活断層調査を実施します。ここでは、一般的な活断層調査の流れを解説します。

机上検討

文献調査

既往調査の結果を収集・分析し、対象活断層の分布、地形的な特徴、地質的な背景、調査状況などを整理します。

地形調査

地形図判読、DEM解析、空中写真判読などを用いて、活断層がずれることによって形成された特徴的な変動地形を抽出します。DEM解析では、航空機、ヘリコプターやドローンを用いて、上空からレーザー測量を行い取得したDEM(数値標高モデル)を用いて変動地形を抽出します。空中写真判読では、戦後の米軍写真や国土地理院の空中写真等を用いて、実体視により変動地形を抽出します。

現地調査

地表踏査

地表踏査中の一コマ

活断層の分布地域で地表踏査を行い、ボーリングやトレンチ調査の位置選定のための基礎的なデータを収集します。踏査では、地形判読でみられた地形的特徴の確認、机上調査では把握できなかった微小な地形の記載、地質分布の確認、断層露頭の探索などを行います。踏査結果はルートマップに取りまとめます。

露頭調査

地表踏査で断層露頭が見つかった場合には地質観察やスケッチを行い、断層の性状や変位センスの記載を行います。断層が新しい地層を切る露頭が見つかった場合には、活断層露頭と認定することが出来ます。地層の年代測定や火山灰などの鍵層を特定し、活動時期や変位量のデータを取得することができます。

物理探査

活断層の推定通過位置を横断する測線を設定し、物理探査を実施します。探査では、反射法地震探査、電気比抵抗探査、地中レーダー探査、微動アレイ探査などを目的によって使い分けます。物理探査の詳細は「物理探査」のページをご参照ください。

ボーリング調査

地表地震断層の脇でボーリング調査を実施中

活断層の推定通過位置周辺でボーリング調査を実施します。ボーリング調査の目的は、活断層の通過位置の特定、活断層周辺の地質分布の確認、地層の年代決定のための試料採取などがあります。断層を挟んで密にボーリングを配置すること(群列ボーリング)によって、地層の変位量を詳細に把握します。斜めボーリングなどで直接断層を貫く掘削を実施し、断層破砕部を採取することもあります。

トレンチ調査

水田の休耕時にトレンチ調査を実施

活断層の推定通過位置で地面を溝状に掘削し、壁面に現れた活断層及び周辺の地層の状況を直接確認します。掘削した壁面は平滑に整形し、1m間隔のグリッドを張り、壁面観察、スケッチ、写真撮影を行います。地層に含まれる木片や炭質物の14C年代測定、火山灰分析、土器や石器の鑑定などから地層の年代を決定します。断層に切られている地層、断層を覆っている地層の年代を求め、活断層が最後に活動した年代を絞り込む「上載地層法」を用いて断層活動を評価します。これらの結果から、活断層の活動時期、断層のずれの方向や変位量、平均活動間隔、平均変位速度などの情報を得ることが出来ます。

トレンチ調査の成果物の例(モザイク写真)
トレンチ調査の成果物の例(壁面スケッチ)

(「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査 平成29年度成果報告書」から引用)

室内分析

断層破砕帯の観察・分析

断層に「上載地層法」が摘要できない場合には、活断層かどうかの判断が難しくなります。そのような場合には、断層破砕帯の観察・分析をもとに、断層の活動性評価を行います。断層破砕帯の露頭・研磨片・薄片・電子顕微鏡などの様々なスケールでの構造観察、断層面の条線観察、X線回折分析、化学組成分析などを組み合わせて、断層破砕帯の特徴や活動性を明らかにします。

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