非破壊調査
非破壊調査は、構造物を破壊(損傷)せずに、大きさ・形状・劣化状態や分布状況などを調べる調査手法です。構造物の材料試験にも応用されることもあります。非破壊調査は、構造物に超音波や弾性波、電磁波、電磁誘導などの物理現象を人工的に与えて、構造物の端部や不連続面(ひび割れや健全部と劣化部の境界など)からの反射波を測定し、その測定値を解析・評価することで調査対象を推定する技術です。
元来は鉱物資源や工業製品の品質管理や設備建設時の検査等で利用されていましたが、技術の向上と共に土木構造物分野への活用が進んできました。
近年では、維持管理のための調査・診断・評価の効率化によるコスト縮減が求められ、社会資本整備の安全を確保するための技術として、非破壊調査の活用が求められています。よって、今後ますます非破壊調査の重要性が高まるものと考えています。
当社は、打音調査を定量化する音響打診音調査から、超音波及び弾性波による調査、熱赤外線調査、電磁波レーダ探査などの構造物を対象とした非破壊調査技術を保有し、豊富な実績を基に目的とする構造物ごとに最適な調査計画、非破壊調査手法をご提案しています。
高周波衝撃弾性波調査
高周波衝撃弾性波調査は、対象物にハンマーによる打撃によって高周波の衝撃弾性波を入力し、構造物の端部やひび割れや空隙などの不連続面からの反射波をAEセンサで測定して、不可視部の形状寸法、ひび割位置と性状から健全性の評価・診断を可能とする非破壊調査です。
目的
コンクリート構造物や鋼構造物、転石・浮石、岩盤を掘削などの特別な処理を必要とせず衝撃弾性波(透過波または反射波)の高周波成分伝播特性の変化を利用して、調査構造物の表面から地中部分の深さや大きさ等の形状寸法、内部の損傷(亀裂の位置や幅等)や劣化の度合いを簡便に把握・評価することを目的とします。
広い適用範囲
- コンクリート構造物:杭(既製杭、場所打ち杭)、擁壁、橋台・橋脚、ダム、砂防堰堤など
- 鋼構造物:鋼矢板、H型鋼、鋼管杭など
- グランドアンカー:PC鋼棒、PC鋼より線など
- その他:木杭、転石・浮石、岩盤、コンクリート柱など
調査装置
調査装置として高精度でひび割れの検知が可能な高周波衝撃弾性探査システム(オーリス※)を用います。
- ※オーリス(AURIS)とは、AsunaroAoki Ultrasonic Reflection Integrity Sounding(青木あすなろ超音波反射波健全度探査)の略称(商標登録済)であり、特許および先端建設技術審査証を取得し、NETIS登録(KT-990158-A)された非破壊探査システムです。
調査波形例
形状寸法調査
既設杭調査
老朽化した堰堤の劣化診断-高周波衝撃弾性波法(透過法)による堰堤の健全性調査-
既設の砂防施設には、古い年代に設置された砂防堰堤が多数存在しています。これらの砂防堰堤の中には亀裂、損耗、コンクリート表面の劣化等、内部構造等に問題が生じていると懸念されるものがあります。こうした古い砂防施設の安全性や施設の砂防機能について点検確認を行い、問題のあるものについては緊急的に改築を行い、その保有すべき機能の長寿命化を図るための的確な対策の実施が必要と考えます。
当社では、このような古い砂防施設、特に砂防堰堤の目視点検では判別できない内部の老朽化や緊急改築が必要とされる施設,歴史的砂防施設の保存・活用に関して一次選定調査(詳細調査箇所の選定)を高周波衝撃弾性波法(透過法・反射法)による非破壊調査で支援します。
砂防堰堤の劣化診断への適用
目視調査では把握できない内部状態を、弾性波速度で評価します。
- 調査は、高周波衝撃弾性波を用いた透過法で行う。
- 発信側および受信側のセンサを取り付ける。受信側センサは、場所によってクライマーにより設置する。
- 砂防堰堤上部の上流側天端を発信側、下部の下流側を受信側として、発信側から鋼製ハンマーで打撃する。
- 受信側センサで伝播した弾性波を検知する。
- 伝播時間を読み取り、伝播速度(Vp)を求める。
劣化PC管の調査、診断・評価手法
PC管は、農業用水路をはじめ生活及び工業用水路として、日本国内には総延長約3,000km(PC管協会出荷実績による)が地盤内で敷設されています。これらのPC管は敷設後30~40年を経過し、ここ数年で多くの破損・破裂事故が顕在化しているものの、PC管は埋設管であることと、その老朽化(劣化)は管内部や地表からは不可視部となるPC管外周部(土壌との境界にあるカバーコート)から劣化(薄肉化)が進行するため、殆ど把握できない状態となっており維持管理の上で問題となってきていました。
このような背景から当社では、埋設環境から劣化管を絞り込むスクリーニング技術をはじめ、カバーコートの薄肉化には超音波法による部材厚測定を適用し、PC鋼線の発錆・破断による老朽化の検出には電磁誘導法(特許第4662890号)にて把握する調査、診断・評価方法など、劣化状況に応じた複合的な非破壊調査技術し、地中に埋設されたPC管の健全性を診断・評価することが可能です。さらに、本調査技術は、独立行政法人水資源機構「PC管の調査・診断マニュアル【令和3年度版】」に適用されています。
高効率で効果的なPC管の劣化調査~診断・評価結果を提供
- 地中に埋設されているPC管の劣化は、埋設環境に影響を強く受けることから、現地踏査や地下水・土壌調査などの埋設環境調査及び敷設されているPC管の諸元調査を実施し、劣化因子の検討と劣化区間の絞込みなどの劣化危険度評価を行います(埋設環境データベースの作成)。
- 埋設環境データベースによる劣化危険度評価結果において、劣化が懸念される区間を対象に、管内からの非破壊調査(超音波部材厚測定及びPC鋼線の発錆・破断測定)を実施します。
- 非破壊調査結果から、当該区間におけるPC管の診断・評価を行い、対策の検討や管更生工法を検討します。
得られる結果
- 埋設データベース
埋設環境データベースは、管路施設、地形・地質、土地利用状況など、埋設環境が直感的に把握できるように構成されており、PC管における危険度評価や調査対象の優先順位評価などに活用されます。
- 非破壊調査(超音波部材厚測定及びPC鋼線の発錆・破断測定)
- 超音波部材厚測定から、カバーコートの残存部材厚を測定して劣化(薄肉化)の度合いを把握します。
- PC鋼線の発錆・破断測定から、PC鋼線の健全性(発錆・破断の有無)を確認します。
- PC管の診断・評価
非破壊(超音波部材厚測定及びPC鋼線の発錆・破断測定)による複合調査結果から、劣化したPC管の診断・評価を行います。また、劣化したPC管が認められた場合には、当該調査区間と同様な埋設環境にある区間について、埋設環境データベースに基づいて抽出し、追加調査の検討や対策工の施工範囲について検討します。
熱赤外線画像計測調査-熱赤外線カメラを用いた温度分布計測
熱赤外線画像計測調査は、熱赤外線カメラ(サーモグラフィ)を用いて、熱赤外線画像(温度画像)を撮影し、調査対象物表面の温度分布を把握する調査方法です。
本調査方法を適用するにあたっては、調査対象物の温度把握を目的として適用する場合と、得られた温度分布の差画像(高温時画像-低温時画像)から調査対象物内部(比較的表層内部)の状況を推定・把握する目的で適用する場合があります。
音響打診音調査「DSA(ダイヤサウンドアナライザー)」-数値化したコンクリート健全度評価-
DSA(ダイヤサウンドアナライザーの略称)は、球形ハンマーで調査対象物を打撃し、その際に発生する打診音をマイクで集音、機器本体内で打診音を解析しDSA値(指示値)として表示・記録することで、調査対象物の健全性を定量的に評価できる装置です。
Digital-DSAは、従来のDSAの機能(ハードに依存)に対し、最新デジタル技術を駆使して専用アプリケーションソフト(Windows版)により機能を発揮するように開発した新しいシステムです。
電磁波レーダ探査
電磁波レーダ探査は、測定対象物に電磁波を放射し、電気特性の異なる境界で反射した電磁波を捉えることにより探査する方法であります。また、深度2m程度までの地下浅部を対象とした探査手法の中では最も分解能が高く、近年は、デジタル処理の発展に伴って、高速かつ高精度で可視化できるようになり、地盤構造や地中(道路路面下)の埋設物、埋設管、空洞、遺跡などの調査及びコンクリート構造物などの配筋や擁壁背面の状態(空洞、背後地山の状態)などの調査に広く利用されています。
測定方法
例えば、地中レーダ探査の測定方法は、一般的には送受信アンテナを用いて地表面を移動しながら連続的に測定します。測定記録はリアルタイムで測定器に収録されます。その際に、地中の反射波の振幅に応じて着色された探査記録が得られます。この探査記録について解釈を行うことにより、地中の状況を推定します。
測定状況例
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