土壌汚染対策

土壌汚染調査

建設工事で発生する自然由来の重金属等を含有する岩石・土壌(以下、発生土)を盛土材などに再利用した場合、重金属が溶出し地下水が汚染され健康被害が発生する可能性があります。土壌汚染対策法では、固結した岩石については規制の対象外としていますが、自然由来の重金属を含有するトンネル等からの発生土については、土壌汚染対策法に準拠した調査と対策が行われる事例が増えています(固結した岩石の取り扱いについては、施工場所の自治体環境部局への問い合わせが必要です)。
当社では、近畿地方整備局、北海道開発局、北海道新幹線整備事業等で計画されているトンネル発生土について、自然由来の重金属を含む発生土の周辺地下水への影響防止を目的に、調査・解析(リスク評価)に基づく対策工立案・モニタリングを実施しています。

調査

図1 ボーリングコアに含まれる微化石に着目した古環境の復元

水が地球上を絶えず循環しているように、自然由来重金属等も地球化学的作用(マグマ活動、熱水活動等)と生物化学的作用(石油・石炭の生成等)により絶えず移動をつづけ、安定した環境では濃集帯を形成しています。人類の社会活動(トンネル工事、鉱山開発等)は、自然由来重金属等が安定した環境を変化させ、あらたな環境問題を発生させるリスクを持っています。当社では、自然由来の重金属を含有する発生土の分布について、地球化学的な物質循環(熱水変質作用、風化作用、堆積時の古環境、海水準変動等)を考慮した地質調査を行っています。

事例1)堆積物の古循環に着目した土壌汚染調査

札幌市の沖積層において、堆積物の古循環に着目した土壌汚染調査を実施しました。札幌市のような海岸沿いの沖積層は、海水準の変動をうけ、重金属の濃集帯を形成する場合があります。そこで、当社では、ボーリングで採取した土壌にふくまれる微化石に着目し、地層が堆積した時代の海水準や海水の影響度といった古環境を復元し、酸性化しやすい土壌や重金属の濃集しやすいゾーンを特定しました(図1)。

解析(リスク評価)に基づく対策工立案

図2 発生土の長期溶出特性を求める実現現象再現試験の実例

対策工を立案するためには、発生土から重金属の長期的な溶出特性と、盛土予定の基礎地盤の重金属の吸着性能、地下水の流れを適切に評価する必要があります。

事例2)発生土の長期溶出特性を求める実現象再現試験

北海道開発局・近畿地方整備局等で計画されているトンネルにおいて発生土からの重金属の長期溶出特性は、実現象再現試験で評価しました(図2)。実現象再現試験は、発生土を充填した容器を野外に設置し、容器に浸透した雨水を定期的に回収し、重金属の濃度とpHを測定することで、発生土の重金属の長期溶出特性と酸性化の可能性を評価することができました。

事例3)地盤の重金属吸着性能、地下水の流動を考慮したリスク評価

トンネルからの発生土の長期溶出特性と、盛土箇所からの評価地点までの暴露経路である盛土箇所の地盤の重金属吸着性能・地下水の流動を考慮した移流分散解析により、評価地点までの重金属の到達時間、濃度を求め、効率的で効果的な対策を提案しました(図3、図4)。

図3 リスク評価の概念図
図4 盛土後の地盤内での重金属の拡散の予測解析

モニタリング

図5 盛土施工後の地下水モニタリング孔での採水状況

重金属を含有した発生土の対策を行う場合は、モニタリングが必須になります。モニタリングは、対策工を施工する前のバックグラウンド値の把握、施工中および施工後の安全性の検証のため、地下水と表流水の水質測定を行います。

事例4)地形・地質状況を考慮したモニタリング箇所の提案

盛土予定箇所の地形・地質状況と地下水の流動を考慮し、盛土場の上流側と下流側にモニタリング箇所を提案しました。地下水のモニタリングでは、帯水層に合わせ、土壌汚染を最適にモニタリングできる掘削地点とストレーナー区間の提案も行いました。

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